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「がんと闘うな」に危惧

2014.01.11(15:00) 792

次のような記事がありました。

「がんと闘うな」に危惧 手術拒否の男性が死亡 作家・荻野アンナ 「アンナの日常復光」
共同通信社 2014年1月10日(金) 配信


 大腸がんを手術してから1年半、新年を迎える喜びもひとしおである。

 私の場合は見つかるなり切り、抗がん剤でみっちりたたいたのが正解だった。しかし昨今は「がんと闘うな」派に勢いがあり、その流れに危惧を抱く意見も出て、情報は錯綜(さくそう)している。

 「闘うな」派は、がんと似て非なる「がんもどき」の存在を指摘する。放置しても害のない「がんもどき」を、がんと混同して治療するのはたしかに問題だ。とはいえ本物のがんを放置すれば命にかかわる。

 患者は難しい決断を迫られるわけだが、対照的な二つの例が身近にあるので、ご紹介したい。

 Aさん(男性)はヘビースモーカーである。40代半ばまで、1日80本は吸っていた。せきが続くので近くの内科に行った。撮ったエックス線写真に、医師は眉をひそめた。気になる影があるからと、病院を紹介された。

 病院では肺がん専門の医師が検査をした。血中の酸素濃度から、肺の機能低下を指摘された。「とにかく月に1回来てください」

 半年通ったあげく、「もっと高度な専門医に診てもらったほうが」と紹介されたのが県立がんセンターだった。

 「これはもう本物だな」とAさんは落胆した。訪れたがんセンターの待合室には俳句・短歌のコーナーがある。今年の桜を来年も見られるのだろうか、といった類いの作品が並ぶ。ますます気分が暗くなった。

 若いドクターはエックス線写真を見るなり「肺がんですね」とあっさり告知。「すぐ開きます?」「ちょ、ちょっと待ってください」

 コンピューター断層撮影(CT)と磁気共鳴画像装置(MRI)にも影は出たが、決め手にはならない。2週間ごとの血液検査で様子を見ることになった。医師は「開いて見ればすぐ分かるんですけどね」と繰り返した。

 1年後、医師が最初のエックス線写真と最新のものを比較してみると、影は微妙に小さくなっていた。がんは絶対に減少しない。「強いて言うと肉芽腫ですね」

 結局、無事放免となるまでに1年半を要した。その間にAさんは遺言状をしたため、仕事の後を知人に託し、疎遠になった親戚と和解した。その後は禁煙にも成功した。がんと言われたのが人生の節目になった、と今だから言える。

 70代のBさんは、私のホームドクターの患者だった。2011年の2月に血尿で受診し、細胞診でぼうこうがんの疑いが出た。先生は総合病院の泌尿器科を紹介した。

 結果は4センチのがんで、転移はなく、切除可能。手術を勧められたが、Bさんは「がんと闘うな」派の心酔者で、医師とけんかして席を蹴ってしまった。

 Bさんの段階だと、手術でウロストミー(人工的な尿の排出口)を付けることになる。尻込みする気持ちが、余計に「闘うな」派へと向かわせたのか。Bさんは総本山の病院へ行き、高名な著者C氏に診てもらい、大満足であった。

 11年夏になり、Bさん(男性)はホームドクターの元に舞い戻ってきた。「しばらく様子を見て」から放射線照射をしてくれる先生を探すように、とC氏からアドバイスされていた。

 がんは「様子を見」たりしようものなら、恐ろしい速度で増殖すると、シロウトの私でも知っている。

 先生が、あらためて紹介した病院は、放射線のみでは治療として不適切であること、ましてや「しばらく様子を見て」から照射、というC氏のメニューでは無理な旨、Bさんに説明した。Bさんのがんは、この時すでに6センチになっていた。それでもBさんは手術を拒否した。

 その後Bさんは別の病院で放射線照射を受けた。治療が終了し、12年の頭に撮ったCTで、腫瘍は縮小していた。Bさんは笑顔でホームドクターに報告したが、先生のほうはいたたまれない気持ちを隠すので精いっぱいだった。

 12年は小康状態を保ったが、13年も6月になると、Bさんは食事も取れない状態になった。C氏の病院はもちろん、手術を断った二つの病院は受け入れ先にならない。先生が探してくれた個人病院で、ほどなくBさんは亡くなった。手術を受けてさえいれば、今でも元気だったはず、と先生は悔しがる。

 がんもどきに翻弄(ほんろう)されたAさんと、がんを直視しなかったBさんと。対照的な2人から、がんをめぐる複雑な現状が見えてくる。教訓は生かさねば、との思いを強くした。

 ※荻野アンナ氏の略歴
 おぎの・あんな 56年、横浜市生まれ。作家・慶応大教授。91年「背負い水」で芥川賞。93~94年、共同通信加盟紙に「アンナの工場観光」を連載。近著に「大震災 欲と仁義」(共同通信社)など。

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        夕方のピンクの雲

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りんむうフォトダイアリー



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2014年01月11日
  1. 「がんと闘うな」に危惧(01/11)