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登山外来の現場から ちょっとけがをした−それは「遭難」ですか?

2015.07.03(14:44) 1008

次のような記事がありました。

1)ちょっとけがをした−それは「遭難」ですか?

中高年に登山愛好家が急増する今、「私は大丈夫!」と思っている方こそ要注意。登山には危険がつきまとうが、装備や服装を軽視しがちな風潮が広がっているのも事実。登山家・三浦雄一郎氏の専属医としてエベレストにも同行した日本人初の国際山岳医が、医学的データを示しながらわかりやすく警鐘を鳴らす。では、何に注意をしたらよいのか――。山を愛する人を応援するコラム。

2015年6月1日
大城和恵 / 心臓血管センター北海道大野病院医師/国際山岳医
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 いつの間にか中高年入りしてしまった「登山外来の現場から」執筆者の大城和恵です。

 体の動きも体力も昔と違うことを少しずつ感じています。最近は、ちょっと臆病に、ちょっと慎重に、自分を戒めながら山に登っています。そう言いつつも先日、登山中に骨折してしまいました。「救助は呼びたくないなー。『国際山岳医救助される!』なんて書かれたくないなー。勝手に登ったのに、自力で下りないのは嫌だなー」と思いながら、なんとか1人で下山。靴の選択が悪かった、と反省しました。

 「不注意だ」と言われたら、まったくその通り。気にはなっていたんです……と心の中で言い訳する始末で、弱い立場を思い知るのでした。

 小さなミス一つは、条件がよければ対応できる。小さなミス一つでも、条件が悪ければ1人ではどうにもならない。小さなミスが二つになると、死にさえする。幸い、若い頃は小さなミスで済んできたが、年をとると小さなミスで終わらなくなるし、今までミスなんてしなかったところでミスをする。

 中高年というのは、うまくいかないことがあって初めて「自分は年をとった」と実感できるものです。登山の際、「山をなめていた」というより、「老いがこんなものとは知らなかった」と感じた方もいらっしゃるのではないでしょうか。

 「私は大丈夫!」と思った方、そういうあなたこそ、要注意ですよ!

 「では、何に注意をしたらよいのか」を、この連載を通してお話ししていきます。

 山を愛する人を応援する、山の医療コラムが今日からスタート!

 遭難しない登山者を目指す皆さんのお役に立ちますように……。

「遭難」ってどういうこと?

 遭難は書いて字のごとく、「難に遭う」ことです。ひどく大げさに響きますね。当事者としては「ちょっとけがした」「道を間違えた」「事故った」と表現したいものです。しかし、自力で下山が困難となった状態、連絡もとれず周囲に心配をかけた状態は、まさしく難に遭う、そう「遭難」なのです。私の知り合いも、さんざん救助隊にお世話になりながら、「事故報告書」という言い訳ばかりの報告書を書いていました。自分も、当事者になるとこうなってしまうのかな、と省みるのでした……。

山岳遭難者の7割が40歳以上の中高年

 2014年に発表された警察庁の調査(※)によると、13年中の山岳遭難者は2713人。一年を通して、遭難者の年齢は40歳以上の中高年が1996人と全体の約4分の3(73.6%)、うち60歳以上が1258人と全体の約2分の1(46.4%)を占めています。さらに遭難者のうち死亡または行方不明となった方320人のうち、実に6割以上となる204人(63.8%)が60歳以上。年を重ねるほど遭難の割合が高くなり、遭難後の生存率は低くなっているのです。しかし、雪の降る時期では、バックカントリースキーヤーやスノーボーダーが増え、冬の遭難だけをみると、比較的若い30代、40代の遭難者が目立ちます。これについては、初冬のコラムで取り上げます。

遭難の理由No.1は「道迷い」

 遭難件数の多い県は順に、1.長野県、2.静岡県、3.北海道、4.富山県。救助を要請した理由で最も多いのは、「道迷い」で4割強(41.8%)です。それに滑落(17.0%)と転倒(14.5%)が続きます。病気が1割弱(8.1%)で、その他に、疲労(5.0%)、悪天候(2.4%)、雪崩(0.7%)などがあります。

 「道迷い」は医療とはあまり関係ないようですが、うろうろと探しているうちにエネルギーが枯渇し、まだ寒い春山で緊急的に野営した結果、低体温症になってしまうなど、救助を要請した理由には生死に関わる医療的問題が隠れているのです。「滑落と転倒」には、捻挫や骨折で動けないというものから、多発外傷や頭部外傷により死を招くものまで幅広く含まれています。「病気」はわずか8.1%ですが、重症が多く死亡率が高いのが特徴です。心臓発作による救助要請が目立っています。

 死者および行方不明者は全遭難者数の11.8%です。死者数の順では、1.長野県、2.富山県、3.北海道、4.山梨県と、遭難件数の多い県の順位とは異なります。13年の死亡が多い3県の死因(図1、図2、図3)を見ると、山域ごとに死因には違いがあることがわかります。

 死因は、外傷、寒冷傷害(低体温症、雪崩埋没)、心臓発作が圧倒的に多い点で共通しています。外傷と雪崩埋没は地域差が大きく、心臓発作は山域に関わらず、一定の割合で起きています。


 次回は、「中高年に多い山での心臓突然死」について、詳しくお話しします!

※警察庁生活安全局地域課「平成25年中における山岳遭難の概況」(14年6月12日警察庁発表)

【登山Q&A】

Q1:登山中に 1人で手に負えない状況になったら?

A1:速やかに110番、あるいは119番に電話しましょう。どちらでも構いません。ためらって救助要請が遅れ、日没になると、救助に来られなくなることもあります。救助要請時に大事なのは以下の3点です。

(1)「山岳遭難です」と言いましょう。電話に出る人は、街の交通事故や事件や病気を扱うことがほとんどですので、最初に趣旨を伝えてしまいましょう。

(2)「場所」を伝えます。途中で電波状況が悪いと通信ができなくなりますが、場所さえ伝えておけば、より早く捜してもらえます。

(3)携帯電話などは、バッテリーを温存するため、余計な電話はかけないようにしましょう。冷えるとバッテリーが消耗するので、懐で温めておきます。

Q2: 万一の場合に備える登山の必携アイテムと言えば?

A2:(1)カッパ:雨風をしのげます。冷えたら一気に低体温症になりますよ。

(2)ヘッドライト:光があるとより安全に行動できます。

(3)通信手段:携帯電話は通信圏外もまだ多くあります。アマチュア無線、衛星電話も有効です。


大城和恵
心臓血管センター北海道大野病院医師/国際山岳医
おおしろ・かずえ 1967年長野県生まれ。医学博士、山岳医療修士。日本大学医学部卒業後、循環器内科医として約10年間の付属病院勤務を経て、「山での遭難者を助けたい」という思いを募らせて本格的に山岳医療の勉強を始める。98年、アフリカ大陸最高峰キリマンジャロ(5895m)に登頂。心臓血管センター大野病院を拠点に診療を続けるが、09年に退職し渡英。1年をかけて日本人として初めて「UIAA(国際山岳連盟)/ICAR(国際山岳救助協議会)/ISMM(国際登山医学会)認定国際山岳医」の資格を取得した。現在は同病院の循環器内科・内科および登山外来で勤務するかたわら、北海道警察山岳遭難救助隊のアドバイザーも務める。遭難実態を知り、現在遭難しないための医療情報、心臓死の予防、高所登山のアドバイス、ファーストエイド技術の講習会主宰など、山と登山に関する多方面で活躍する。13年には三浦雄一郎さんのエベレスト遠征隊にチームドクターとして参加した。自身もマッキンリー、マッターホルン、マナスル(世界第8位)登頂など海外を含む豊富な登山歴を持つ。

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