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社会の底が抜けてしまった 作家の高村薫さん 「検証・相模原殺傷事件 識者に聞く」

2017.01.29(00:11) 1276

次のような記事がありました。

社会の底が抜けてしまった 作家の高村薫さん 「検証・相模原殺傷事件 識者に聞く」
その他 2017年1月27日 (金)配信共同通信社
 元来、人間は手前勝手で多くの負の感情を持つ存在だ。それを意思の力で抑え込む「良識」によって秩序を保ってきた。だが今はヘイトスピーチのように、一昔前ならば絶対に許されないことが公然と語られている。そして政治家の問題発言も見過ごされる。たがが外れ「赤信号もみんなで渡れば怖くない」という状況だ。社会の底が完全に抜けてしまった。

 相模原事件の容疑者は、障害者の存在を否定するような主張をしていたとされ、実行にも移した。決して容認できないし、特異な人格だと思う。一方で、彼の言動には社会の変化が密接に関わっていると考えざるを得ない。

 高度成長の時代、未来は明るいと思っていた。1970年の大阪万博の頃だ。米ソ冷戦や公害などがあり状況は必ずしも良くはなかったが、それでも多くの人たちが豊かさを享受し、暮らしがある程度安定した中産階級ができた。人々には社会通念を守り育てる余裕があり、障害者や高齢者のために税金を充てる社会福祉国家を選び取った。

 だが大きな人口のかたまりが下層へと転落し、格差は拡大した。いくら働いても、結婚生活を送るだけの賃金さえも得られない。今はそんな諦めや絶望に社会が直面している。目の前のことに手いっぱいで、自らに良識を課すことができなくなり、負の感情を隠さなくなった。会員制交流サイト(SNS)のように、好きな時に指を動かすだけで発信できる簡便なツールもあり、本性がむき出しになっている。

 資本主義に基づくシステムがうまくいかなくなったと痛感する。代替策がない以上、格差も貧困も広がり続ける。世界中で同じ現象が起きており、明るい兆しはない。時代は完全に変わった。そのことをしっかりと認識する必要がある。われわれは非常に悪い条件の中で障害者らに向き合わざるを得なくなっている。

 まずすべきことは、今までより強い意思を持ち、自らを律することだ。不規則発言は、聞こえないふりをせずに止める。社会の合意として厳しく対処するためには罰則のある法整備も必要だ。人を傷つける発言に言論の自由は認められない。

 一方、福祉政策として正しかったのかと疑問に思うことは、障害者や高齢者をへき地や施設に隔離し、姿を見えなくしてきたことだ。私たちの普段の世界に存在しない「異物」にしてしまえば、負の感情は増していく。彼らと地域で共に暮らす社会につくり直さなければいけない。


 たかむら・かおる 53年、大阪市生まれ。93年「マークスの山」で直木賞。近著に農村で暮らす年老いた男を描いた「土の記」。

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りんむうフォトダイアリー



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